MIC要請書:「法務・検察行政刷新会議(仮称)」に関する要請書

法務大臣
森 雅子 様

「法務・検察行政刷新会議(仮称)」に関する要請書

 辞職した黒川弘務・前東京高検検事長の問題を受け、森法務大臣は5月26日の記者会見で「法務・検察行政刷新会議(仮称)」を設置し、これからの法務・検察行政のあり方について必要な検討を開始する考えを表明しました。検討内容の詳細は明らかになっていませんが、メディア・文化・情報関連の職場で働く労働者がつくる「日本マスコミ文化情報労組会議」(MIC)として以下のことを要請します。

 今回、大規模なツイッターデモに発展するなど、法務・検察に対する国民・市民の不信・批判が高まっている要因の中心は、「法務・検察と首相官邸との関係性」にあります。

 「口頭決裁」で過去の国会答弁を覆して黒川氏を定年延長させるという、違法の疑いのある閣議決定を行った後、その決定を後付けで正当化するような検察庁法改正案が浮上しました。「検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定などにまで掣肘を受けるようになったら、検察は国民の信託に応えられない」と、検事総長経験者らが法務大臣宛ての意見書で表明した危機感に、一連の問題が象徴的に表れています。常習賭博罪の疑いもある黒川氏に対して、懲戒より軽い「訓告」で済ませた処分をめぐっても、首相官邸の介入が指摘されています。

 「刷新会議」の発表にあたり、森法務大臣は「安倍首相の指示」に言及しました。検察の独立性が揺るがされた今回の事態に際して、行政主導で「刷新」が議論されることに強い違和感も覚えますが、設置される「刷新会議」においては論点をすり替えず、現在の法務・検察と首相官邸との不透明な関係性を見直す議論を進めるよう強く求めます。特に、政権の不正にも切り込む準司法機関としての検察の使命を理解せず、「検察官も行政官であることは間違いない」と述べて内閣の統制に服するのを当然のように主張した安倍首相の認識も含めて検証する必要があります。

 黒川氏の辞職や処分の直接的な原因となった産経新聞記者・朝日新聞社員(元記者)との「賭け麻雀」は、メディア関連労組としても許しがたい行為です。新聞労連が5月26日付の声明で表明したように、産経新聞社、朝日新聞社を中心に、報道機関が、取材慣習の抜本的見直しを含めて、自らを律していく必要があります。河井克行・前法務大臣夫妻の公職選挙法違反事件の捜査が行われ、安倍首相の「桜を見る会」の問題をめぐる刑事告発もなされている状況下において、「刷新会議」の議論が新たな取材・報道規制につながることは本末転倒です。その点をしっかり踏まえて、委員会メンバーの人選も含めて、真に国民・市民に信頼される法務・検察のあり方を目指した議論が進むことを強く求めます。

2020年5月29日
日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
(新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、
映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)