不適切な記者会見を行う立法府の長に抗議する

―知る権利とハラスメント被害を軽視するな―

 2023年10月16日
日本新聞労働組合連合 (新聞労連)
中央執行委員長 石川昌義

 細田博之衆院議長が10月13日、議長辞任を表明する記者会見を開きました。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や、週刊誌で報道された女性記者たちへのセクシャルハラスメント疑惑に初めて公の場で説明する場でしたが、参加者を著しく制限して多くの地方紙や出版社、フリーランスの記者を排除した上、セクハラ被害者を傷つける発言を繰り返す悪質なものでした。記者会見のオープン化という潮流に背を向け、ハラスメントへの無理解を露呈した細田議長に強く抗議します。


 細田議長は、旧統一教会の会合で頻繁に挨拶したり、自らの選挙に教団からボランティア派遣を受けたりしたことが報じられていますが、議長就任時に自民党会派を離脱しているため、同党が2022年9月に公表した所属議員と教団との関係調査の対象から外れています。細田議長はセクハラ疑惑と併せて説明を求める声を無視し続けました。ようやく開いた今回の会見ですが、「発言の映像取材を冒頭に限る」「参加者を特定の記者クラブに限定した上で、1社1人に絞り込む」などの不当な制限を、衆院事務局秘書課が事前に示しました。報道機関やフリー記者が抗議したものの、多くの規制が残ったままの会見となり、質問が出続けているにもかかわらず、細田議長は会見を1時間弱で打ち切りました。市民の「知る権利」に応える私たちは、このような強権的な会見の手法を容認することはできません。


 また、セクハラ疑惑では複数の記者の他、自民党職員も被害者として報じられています。大きな権力を持つ政治家と記者、政党職員の関係性を無視し、疑惑を否定した細田議長の「誰ひとり『こういうセクハラがあった』と言う人はいない」という発言は、落ち度があったかのように不当に言い募る2次加害や理不尽な報復を恐れて告発をためらうハラスメント被害者を高圧的に抑え込む許し難い暴言です。出席した記者から「セクハラは上下関係があって被害者がなかなか言い出せないものであるという認識を持ってほしい」と苦言が呈され、岸田文雄首相も「一般論」とした上で「名乗り出る人がいなければセクハラはないという考えは適切ではない」と述べるほどの問題発言です。18年に発覚した財務事務次官の記者へのセクハラ問題の際に、被害者に名乗り出て調査に協力するよう財務省が求めた事案では、新聞労連は抗議声明を出しました。新聞、放送、出版業界では取材中の性暴力被害が後を絶たず、新聞労連は被害回復を求める訴訟を業態の枠を超えて支援しています。今回の細田議長の発言は、政官界にハラスメント対応への無理解が依然としてはびこっていることを如実に示したものであり、発言の撤回を強く求めます。


 細田議長は議長を辞任した後も、衆院議員であり続けます。記者会見では次回の衆院選への立候補も表明しましたが、質問を続ける記者に背を向けて会見場を後にしました。公の場での発言に消極的な姿勢は、高い倫理観が求められる「三権の長」の一人としてふさわしくありません。公人であり続ける以上、あいまいな説明に終始した今回の会見後も、自らに向けられた疑惑への説明責任を果たすことが必要です。

以上