第110回定期大会報告

大会宣言~労組の原点見つめ直して~

 新聞労連は7月25、26の両日、都内で第110回定期大会を開き、嵯峨仁朗委員長2期目の新執行部が発足した。大会のメインスローガンは「新聞と平和の危機を乗り越え、いまこそ労連に力強い結集を」。働く者の暮らしと権利、そしてジャーナリズムを守る闘いを引き続き力強く進めることを確認した。

 アメリカが始めたイラク戦争は泥沼化し、世界各地で起こるテロが市民の平和な生活を脅かす。核拡散の動きは近年むしろ加速し、昨年10月には北朝鮮が核実験を実施した。新自由主義、極端な市場原理主義が世界中を席巻、格差社会を拡大させた、と指摘されている。社会の不安定化という暗い雲が立ちこめる。国内では、安倍政権が国民投票法を成立させた。首相は任期中の改憲に意欲を示しており、九条見直しを目論む。米軍の世界戦略に応じて、日米軍事再編、基地強化が推し進められている。そこでは「アメとムチの恫喝」という手法すらとられている。

 戦後、新聞は自らの戦争責任に対する反省の上に再出発した。しかし今、侵略戦争に乗り出したことを反省し、「過ちは二度と繰り返さない」という、新聞人の誓い・決意を、少数派に追いやろうとする力が勢いを増しているようにも見える。長崎市長殺害事件、相次ぐ発砲事件で浮かび上がったのは、言論ではなく暴力で気に入らぬものをねじ伏せようとする暗いものが、なお社会に根強く巣食っている現実だ。朝日新聞阪神支局襲撃から20年。われわれは民主主義と言論に対する暴力には断固として闘い、あらゆる形の脅し圧力に屈しないこと、正義と真実のペンを曲げないことを誓った。

 新聞が新聞としての役割を果たすため、われわれは、今一度「誰のための労組か」という原点を見つめなおす。

 働く人すべての権利と、働きがいのために役立てなければ、労働組合は労働者に見放される。次代への動きを見据えた戦略を獲得し、組織率の低下、職場の空洞化に歯止めをかけなければならない。前期設置した「検証会議」の議論をひとつの軸に、さまざまなレベルで論議を深めていく。運動方針では、組合員の要求と時代の要請に基づいて今日的に経済闘争を見直すことなど6つの柱を打ち立てた。

 非正規労働者の問題はひとつの重要なテーマだ。パートや派遣社員が増え、業務の外注化も進んでいる。未組織労働者の組織化に取り組むことを含め、労組の翼の下に引き寄せる努力を行おう。また、新聞作りの現場をやせ細らせる安易なリストラ合理化には断固として抗っていく。労連は労組主導で再建に取り組む内外タイムスの支援などに取り組んできた。険しい道に立ち向かう弱い立場の労働者にこそわれわれは寄り添い、汗を流す。

 インターネットの興隆で新聞のあり方は大きな転換期を迎えている。販売・広告収入とも頭打ちあるいは徐々にマイナスとなる厳しい状況で、新聞経営者はネットを取り込む方策を模索してはいるものの、当面の利益確保は、別会社化や人員削減に頼っている。「縮小均衡」では未来は切り開けない。労連は産業政策研究会を発足させ、産業の転換点に立ち向かう足場を労組の立場から築いていく。

 憲法改正発議、労働法制改悪の動き、消費税増税、再販問題、地上デジタル放送への完全移行…。大きな変化が目の前に迫る。荒波を乗り切る海図を手に入れるため、そしてその時々に的確な舵を切るため、労連の旗の下に結集し、着実に歩みを進めよう。

委員長に嵯峨さん(道新)再選

新聞と平和の危機を乗り越え、いまこそ労連に力強い結集を

 新聞労連第110回定期大会が7月25、26の両日、東京の文京区民センターと飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで開催され、新年度の運動方針を決定した。新副委員長に一倉基益=いちくら・もとえき=さん(上毛)、新書記長に木部智明=きべ・ともあき=さん(日経)を選出、嵯峨仁朗委員長を再任した。在阪の新副委員長は京都から選出することを確認した。小関勝也(河北仙販)、波部光博(在阪=神戸デイリー)両副委員長と佐藤雅之書記長(全徳島)は退任した。大会ではメインスローガン「新聞と平和の危機を乗り越えいまこそ労連に力強い結集を」を採択した。

 大会は最初に東京地連・石井誠書記長が議長団を推薦し、飯島良介(朝日労組)、永田央基(新潟労組)両代議員を満場一致で選出、議事に入った。続いてMIC・井戸秀明事務局長、憲法労組連の老田弘道・農協労連委員長、JCJ・守屋龍一事務局長が来賓のあいさつをした。

 嵯峨委員長のあいさつの後、議事に入り、最初にスポーツニッポン新聞社の東京・大阪・西部3本社合併に伴い、スポニチ東京・大阪・西部3単組の労連退会と、新たにスポーツニッポン新聞社労働組合の労連加盟、5月に結成された、新聞労連としては2つ目の個人加盟型労組・関西新聞合同ユニオンの労連加盟をそれぞれ承認した。

 続いて、岳南朝日新聞労働組合の労連脱退を承認した。岳南朝日労組は、静岡県富士宮市の地域紙の労組で、1994年3月の組合結成と同時に労連に加盟。その後、社側から組合役員らへの不当配転・不当解雇など組合敵視が相次ぎ争議状態となった。全国の仲間の支援もあり、2002年6月、争議は組合の全面勝利で終結。その後、社側の組合敵視はなくなったが、組合員の退職などが相次ぎ、現在組合員は2人にまで減少した。社の新入社員採用も極めて限定されており、組織拡大も難しい情勢となっている。さらに、組合財政も年々逼迫し、労連加盟継続は困難と判断。ことし6月に労連大会願いを提出。7月24日の拡大中執で、同労組の労連脱退が承認された。同労組の深沢税委員長は「これまで全国の方々に多大な支援をいただいたのに、このような形になり申し訳ない。これまでの皆様のご支援にあらためて感謝します。労連は脱会せざるを得ませんが、組合組織は存続させ、今後に希望をもちたい」とあいさつ。会場からは温かい拍手がわき起こった。

 その後、本部活動報告、財政・監査報告に続き、06年度実績批判、07年度運動方針が本部役員から提案された。

 2日間にわたった討論では、専門部を含め延べ16人が発言した。

 大会は佐藤書記長と美浦委員長が討論をまとめ、実績批判ならびに運動方針、大会スローガンを拍手で採択。役員人事は、一倉副委員長と木部書記長の選出と嵯峨委員長の続投を承認した。最後に、大会宣言を採択、一倉副委員長の団結ガンバローで閉会した。