労連声明:オープンな首相記者会見を求める

 国の税金を使って、首相が主催する「桜を見る会」をめぐる疑惑が深刻化している。

 政権幹部らの後援者を大量に招待して「私物化しているのではないか」という問題に加え、マルチ商法で知られる「ジャパンライフ」の元会長が招待されたり、反社会的勢力の関係者が参加したりしていた疑惑まで浮上している。

 政府は、公文書である招待者名簿を廃棄したことを盾に説明を拒んでいるが、税金の使われ方は、民主主義の根幹にかかわる。政府は、国民から預かった税金を公正に使用していることを説明する責任を負っており、今の政府の姿勢はその責任を放棄していることにほかならない。政府は、電子データの復元などあらゆる手段を講じて、国民・市民の疑問に答えるべきである。

 とりわけ、主催者であり、多くの招待客を招いている首相の説明責任は重い。

 安倍首相は11月15日に記者団のぶら下がり取材に応じ、「桜を見る会」前夜に行われた後援会の懇親会費について、政治資金収支報告書に記載のないことは「政治資金規正法上の違反には当たらない」と主張した。しかし、明細書などの合理的な裏付けは示されず、その後、記者団が投げかけている追加の質問にもほぼ応じていない。

 また、15日に官邸で行われたぶら下がり取材は、開始のわずか約10分前に官邸記者クラブに通知されたものだった。今回の問題を取材している社会部記者や、ネットメディア、フリーランスなどの記者の多くは参加することが困難で、公正さを欠く取材設定だった。

 新聞労連は2010年3月に「記者会見の全面開放宣言」を出している。そのなかで示した「質問をする機会はすべての取材者に与えられるべきだ」との原則に基づく記者会見を開き、説明責任を果たすことを求める。記者クラブが主催する記者会見の進行を官邸側が取り仕切ることによる問題が近年相次いでいる。公権力側が特定の取材者にだけ質問を認めたり、一方的に会見を打ち切ったりするなどの、恣意的な運用のない状態で、オープンな首相の記者会見を行うべきである。

 また、多岐にわたる疑惑を確認するには、十分な質疑時間の確保も必要だ。報道機関の対応にも厳しい視線が注がれており、報道各社は結束して、オープンで十分な時間を確保した首相記者会見の実現に全力を尽くすべきだ。

 2011年に民主党政権の菅直人内閣が平日に官邸で行われていたぶら下がり取材を中止して以降、首相に対する日常的な記者の質問の機会がなくなった。記者会見の回数も減少している。官邸の権限が増大する一方で、説明の場が失われたままという現状は、民主主義の健全な発展を阻害する。国民・市民の疑問への十分な説明を尽くすと共に、今回の事態を契機に、首相に対する日常的な質問機会を復活するよう求める。

2019年12月2日 
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南  彰