その後、いろいろと国会に呼ばれたりもしました。国会では参考人で質問を受けました。緊張したんじゃないかと言われるんですが、現職の時に答弁していた時よりも楽だったですね。
現職の時、局長などの立場で答弁する時には「これを言っちゃいけない」とか「あれは言っちゃいけない」とか「これは必ず言わなければいけない」とか「この問題はこういう言い回しで言わなければいけない」とか、気を遣いながら答弁するわけです。ウソは言っていないけど、ホントのこと言ってないみたいな。
よくいま言われている「ご飯論法」というやつですね。私も、ご飯論法はさんざん使いました。聞かれたことと違うことを答える。聞かれてないことに答えて、聞かれてることに答えない。こういうことはしょっちゅう、やってました、私も。役人ですから。
しかし、この加計学園問題での参考人質疑というのは、一私人として ―― 確かに公務員として経験したことを話すわけですけども、もう組織の中の人間ではありませんので。幸いなことに天下りもしてませんから。天下り問題で私は責任を取って辞めたんですからね。天下りしていないので、組織に対して何の気兼ねも要らないということで ―― 淡々と、自分が知ってることは知ってる、知らないことは知らない、自分が考えたことは考えたこと…そういう素直な気持ちで答弁できましたからね。実は気は楽だったんですよ。ありのままを話せばいいわけです。
その後、私が最初ちょっと申し上げたように、勇気ある告発者であるかのように思われてしまったのは、1つの理由は月刊「文藝春秋」のせいだと思うんですね。
同じ文藝春秋社でも、先にアプローチしてきたのは週刊文春ですけども、月刊「文藝春秋」さんが「話が聞きたい」とおっしゃって、それでインタビューにお答えして「こんなことでした」という話をしたんですけども、それが記事になる時に見せてもらったら『前川喜平 独占手記』という形になってるわけですね。
私はしゃべっただけですから。インタビューで聞かれたことに答えているだけなのに、私が最初から書いたような記事になってるわけです。「これはおかしいでしょう。私は書いてませんよ。私が書いてるみたいになってるのは変じゃないですか」と言ったら「そういうもんなんです」と。
確かに、ああいう月刊誌で「独占手記」っていうのはよく出ますけど、あれは実は本人は書いてないということですね。私も書いてないのに書いたかのようにされてしまったわけです。
しかも、その記事のタイトルが「わが告発は役人の矜持だ」となってまして…。こんな言葉、私はいっぺんも言ってませんよ。いっぺんも言っていない言葉がそのままタイトルになっていてですね。「わが告発は役人の矜持だ」なんて、こんなカッコいいこと言いません。告発したつもりもないし、矜持などとも言ってません。辞めてから言ってるんですし、役人の時は「面従腹背」してたんですから。矜持なんて隠してたわけですから。
どうもこのタイトル、よくないなあと。私の気持ちとはだいぶかけ離れていると。「このタイトルは嫌だ」と言ったんですけど「そういうものなんだ」と言われてですね。「このくらい書かないと売れません」とか言われて、私は「売れなくても構いません」。
しかし、結局「わが告発は役人の矜持だ ~ 前川喜平 独占手記」ってのが「文藝春秋」に載っちゃったんですね。これがやっぱり、間違ったイメージを作り出したんじゃないかと思っているんですよ。非常に私は困ったことだなあと。
しかも、これがあの年の文藝春秋の読者が選ぶ読者賞というのをもらっちゃったんですね。「文藝春秋読者賞」。それで文藝春秋社から連絡があって「読者賞が出ましたので授賞式に来てください」と言われて、自分で書いてないのにもらいに行くのは嫌だと。
自分で書いてたんだったら堂々ともらいに行きますけども、自分で書いてないんですよ。書いてない記事に賞をもらうというのはちょっとなあと思って、嫌だなあと思って言ったんですけど、あんたが来なきゃ困るということで、しょうがなく行ったんですけど…。
行ってみたら小ぢんまりとした授賞式で、出席者全員、文藝春秋の社員だったりして。ですから、気楽に「私は自分で書いてないのに、こんな賞をもらっていいんですかねえ」とか言って、金一封と置き時計をもらって帰ってきました。
山陽新聞労働組合
- 前川喜平さんと考えるメディアのあり方~これでいいの?山陽新聞
- 漫画「山陽新聞が組合いじめ!」
- 当事者の横顔
- 開会あいさつ
- 第1部 講演(1)加計学園とメディアのあり方
- 第1部 講演(2)「山陽新聞会長=加計学園理事」は利益相反
- 第1部 講演(3)加計問題の本質は、安倍首相による国政私物化
- 第1部 講演(4)「首相の意向」で無理やり認可した獣医学部
- 第1部 講演(5)事実を報道できないNHK社会部の「意地」
- 第1部 講演(6)「出会い系バー」…ありがたかった文春砲
- 第1部 講演(7)「読売新聞が書くとは思えない」 ところが…
- 第1部 講演(8)自宅に取材攻勢 「会見するなら包囲を解く」
- 第1部 講演(9)書いてもいない「独占手記」が賞をもらい…
- 第1部 講演(10)愛媛県文書は「加計ありき」の動かぬ証拠
- 第1部 講演(11)首相と理事長の面談を「なかった」ことに…
- 第1部 講演(12)明らかな虚偽答弁 「首相案件」で地元負担倍増
- 第1部 講演(13)理事長会見のひどさ、メディアはもっと追及を
- 第1部 講演(14)教育に新聞を、加計・森友問題も題材に
- 第1部 講演(15)権力者が言う「中立性」にだまされるな
- 第2部 パネル討論(1) こんなにおかしい、山陽新聞の加計疑惑報道
- 第2部 パネル討論(2) 「第一労組」の日下委員長「経営が記事に介入しても何もしない」
- 第2部 パネル討論(3) 越宗会長=加計学園理事? 山陽新聞「分かりかねる」
- 第2部 パネル討論(4) 団交で「会長=加計学園理事」を認めた
- 第2部 パネル討論(5) 新聞社の「隠ぺい体質」は非常に問題
- 第2部 パネル討論(6) 安倍政権の窮地をイカサマで救った山陽新聞
- 第2部 パネル討論(7) 報道の自由を守る「職能団体」としての労組
- 第2部 パネル討論(8) 日本の新聞の半分は「政権プロパガンダ」
- 第2部 パネル討論(9) 越宗会長は加計学園理事を絶対辞めるべきだ
- 第2部 パネル討論(10) 安倍政権は「国民は愚か者だ」と思っている
- 第3部 争議の当事者あいさつ
- 第3部 閉会あいさつ
- 集会報道
- 集会参加者の声