はじめに
「信頼される新聞」へ 現場と市民が刻んだ一歩
この記録は、新聞労連が2019年2月8日、岡山市内で開いたフォーラム「前川喜平さんと考えるメディアのあり方――これでいいの?山陽新聞」の様子をまとめたものです。
山陽新聞社には、新聞労連に加盟し、日本ジャーナリスト会議の岡山支部結成などを支えた「山陽新聞労働組合」と、後から新たに作られた「山陽新聞第一労働組合」の二つの労働組合があります。今回のフォーラム開催のきっかけは、経営陣が昨春、前者(山陽労組)の組合員2人を印刷職場から排除した差別的な人事です。組合方針を理由にしており、明らかな不当労働行為でした。
「言論の自由」を尊ぶ組合を押しつぶそうとする長年の歪んだ労務政策の影響で、山陽労組の組合員は現在3人。定員300人の会場で、経営姿勢を問う集会を開くことは大きな賭けです。それでも開催に踏み切ったのはなぜか。少数労組というハンディキャップを背負いながらも、経営陣に「真実の報道」の大切さを訴えてきた山陽労組の3人には、現場からのボトムアップで、県民・市民から信頼される山陽新聞をつくっていく底力があると感じたからです。県民・市民の声を受け止めながら社内で物を言う基盤として、決して消滅させてはならないと考えました。
おかげさまで、寒さ厳しい2月の、平日の夜にもかかわらず、来場者が立ち見で収まらず、廊下や別室にまであふれかえる盛会となりました。ご不便をおかけして大変恐縮でしたが、400人という来場者数は、現状の山陽新聞への不満と、「社内の現場からしっかり変えてほしい」という切実な願いの表れです。山陽労組と新聞労連は、真に県民・市民の信頼を得られる山陽新聞のあり方を目指して力を尽くしていきます。
そして、山陽新聞社の社員の皆さんにお願いがあります。
今回のフォーラム開催を決断したもう一つの理由は、昨年末の団体交渉の際の日下知章取締役(当時の労務・編集担当)の言動でした。
「新聞社は人権や働く者の権利を守り、平和で民主的な世の中をつくるために奉仕するものです。社員から不当労働行為の訴えを起こされること自体が恥ずべきで、もし、山陽新聞の記者が県内の労使紛争を取材して『お宅の会社もやっているじゃないか』と言われたら、どう答えればいいのですか。書く資格があるのですか」
私たちに問われた日下氏は沈黙してしまいました。
労働問題やハラスメント(いじめ、嫌がらせ)の根絶が社会的な課題になるなか、その意識改革の先頭に立つべき新聞社が社内で問題を抱えていたら、同じようなハラスメントに悩み、苦しむ県民・市民の皆さんに寄り添うことができません。労務政策の歪みは紙面の歪みにつながるのです。
社内民主主義のある山陽新聞社を目指し、一緒に声をあげませんか。県民・市民不在の不幸な状況を一刻も早く解消し、真に信頼される山陽新聞に生まれ変われるように。新聞労連は、心ある山陽新聞の皆さんのチャレンジを全力で応援します。
2019年2月8日、岡山で現場(組合)と市民が刻んだ第一歩が、新しい時代の新聞の礎となることを願って。
2019年4月15日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南 彰