まず、NHKのことを話したいと思います。NHKの社会部の記者さんは、熱心に加計学園問題を追いかけていました。私の所にも何度も取材に来ていました。2017年の3月ごろから私にアプローチをかけておりまして、いろんな資料を見せられて、「これは見たことありますよ」という話をしてました。
NHKの社会部の人たちは非常に多くの情報をすでに持っていましたし、一昨年(2017年)のゴールデンウイークの前には私の単独インタビューもしていたんです。
インタビューと言っても、私の前にカメラを構えられて、私の家のドアの前で立ったまま話していたんですけどね。そういうインタビューの映像があるんですよ。それは、しかし、今に至るまで一度も報道されておりません。第一線の記者さんたちは非常に悔しがっていました。
彼らがギリギリの意地を見せたのは、2017年の5月16日の夜11時台の「ニュースチェック11」という番組です。私の取材に当たっていた記者さんから「ギリギリの報道をしますので見てください」という話があって見たんです。
どういうニュースだったかというと、2017年5月16日の時点では、加計学園の獣医学部は大学設置審議会の審査に移っていましたから、文部科学省大学設置審議会の審査の状況を報じるニュースだったんです。そのニュースの中で、チラッと映った映像があるんですね。
チラッと映ったのは何かと言うと、文部科学省大学設置審議会に関係する文書ではないわけです。それよりずっと前の時点、2016年9月の時点の文部科学省の文書がチラッと映っているわけです。
私は、それが何であるかは知ってました。その文書は先ほど申し上げた「官邸の最高レベルが言っていることだ」ということを内閣府の担当審議官がしゃべった、それを記録した文書なんですね。それが映っているわけです。
大学設置審議会の審査に関するニュースとは関係ないのに、何の説明もないけれども、その映像だけがチラッと映ってる。これは取材した社会部の記者たちの意地なんですね。なんとか画面に映しましたと。
ところが映した中に、肝心の「官邸の最高レベルが言っていること」というところが黒塗りされているんです。肝心なところを黒塗りした文書をニュースの映像で映したわけです。
NHKの中でどういうせめぎ合いがあったのかは分かりませんけど、相当なせめぎ合いの結果として「映すなら映してもいいけども、肝心なところは隠せ」と、こういうことを上から言われたんだろうということですね。これは非常にけったいな報じ方だったんですけども、それでも取材していた記者たちの意地ですね。
それを見逃さなかったのが朝日新聞なんです。朝日新聞は同じように情報を持っていたんですね、いろいろと。まあ報じるチャンス、機会を考えていたんでしょうが、NHKが夜11時のニュースでチラッと出したのを見逃さなかったんだと思うんです。NHKも自分たちと同じような文書を持ってるぞ、と。だったら自分たちが先に報じるということで、その次の日、5月17日の朝刊に出たんですね。
それが官邸の官房長官記者会見の質問に出てきて、菅さんは「怪文書みたいなものだ」と言ったわけですね。そうやってNHKは意地を見せたものの、スクープという手柄は朝日新聞に取られちゃった。朝日新聞はそこからどんどんやっていくわけですけども、NHKは情報を持っているのに、ずっと報じられないという状況は続いていた。
これはNHKだけのことではないと思うんですけども、NHKの中でも社会部と政治部のせめぎ合いがあったと思いますね。私の取材をずっとやってた人たちは社会部の記者さんたちだった。政治部からいろいろと圧力がかかってくる。そういう話をずいぶん聞かされました。
NHKの記者たちはいくら取材してもニュースにはできない。だから、ニュースにするためには、前川さんが記者会見してくれるしかないんだと。記者会見してみんなが同じように取材するという立場になったら、NHKも報道できると。みんなと一緒でなければ報道できないと言うんですね。つまりスクープができないわけですね、いくらニュースを持っていても。
山陽新聞労働組合
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