三宅さん 私は山陽新聞にそんなに期待はしてないんですよね。山陽新聞社という会社がどうなるかというよりも、安倍政権を覆っている黒い霧を晴らすことのほうがよほど重要で、申し訳ないけど、山陽新聞がどうなろうが…。労働者の生活とかは大事ですよ。しかし、それと会社とは別の問題なので、そこは分けて考えているんですけども。
 要は、あの場面というのはもう安倍政権、安倍首相が「あなた嘘を言ってるでしょう。バレバレじゃないですか。もうあなた、終わりですよ」という最後の場面。コーナーに追い詰められて、もういつタオルが投げられるかという状況だったわけですね。忖度をしていたメディアもあったと思うんですけども、もう守りきれないね、という時だった。
 私は岡山の知り合いと「加計孝太郎さんはいま、どこも取材できないみたいだけども、日本中で、世界中で唯一、独占インタビューできる会社を知ってるぞと。山陽新聞だ。今こそ山陽新聞の出番だろう。加計孝太郎独占インタビューだ」という冗談を言ってたら、(幹事社として記者会見を)やっちゃったわけですよ。
 でも、その会見の結果、なぜか安倍さんは窮地を脱出したじゃないですか。ということは、私はここで山陽新聞は、もうKO寸前の安倍政権を、語弊があるかもしれませんけども「イカサマをやって救った」という決定的な役割を果たしたのではないかと思います。
 安倍政権自体、加計問題のスキャンダルはもう、どう見ても歴史的にはかなり決着のついた話かもしれないけれども、安倍首相を救った1つの方策として、この山陽新聞という企業の関与 ―― 経営者をはじめ、いろいろ役割を果たした方がいると思うけども ―― が、もう1つのスキャンダルではないでしょうか。
 日本のジャーナリズム、新聞の歴史にとっても、すごく大きな汚点となるような故意の不正というか、スキャンダルがあるんじゃないか。それを解明する作業は、まだこれからやらなければいけないんじゃないか、というふうに思っています。
 だから、ある意味、私はワクワクしてるところもあるわけです。もうタイトルはできちゃってて「記者会見」という映画を作れるんじゃないかな。今日の集まりも(映画の中の)場面になります。人が集まるかどうか、3人の労組のみなさんがヤキモキして「300人の会場に100人しか来なかったらどうしようか」と心配している。そこが事件解明の端緒じゃないですか。そういうのを読みたい、見たいという読者なり視聴者の熱い思いがあれば、これは実現するわけなんですね。
 韓国でいま、メディアの記者たちが労働者としても闘ってますけども、同じことがやっぱり私たちの社会でもなきゃカッコ悪い。そこで、みなさんの力を合わせて、この臭いフタを開けませんか、というふうに思っている。

南労連委員長 ありがとうございます。先ほど三宅さんに、いま山陽新聞の編集と労務を担当している日下取締役の約20年前のエピソードをご紹介いただきました。「もし経営のほうから編集方針について口を出してきたら、どうしますか?」と聞いた時に「何もしない」と、しどろもどろになりながらおっしゃったわけですね。
 それで、今回、日下さんが編集担当兼労務担当になった時に加計問題が起き、そして会長が加計学園の理事を務めていると。極めて経営と編集のスタンスが問われる事態が生じてしまっている。
 そのときに、山陽新聞の中には2つの労働組合があって、山陽新聞労組が3人、もう1つの山陽新聞第一労組というのが約300人と。この会場は300人ですから、山陽新聞労組の3人はその300人の力を得たということなんですけど、大きい組合の方が沈黙している状況が続いている中で、モノを言う組合が非常に苦労をしているわけなんですね。
 何もしない組合と、しっかりモノを言う組合があるということなんですけど、前川さんは、メディアの中でモノを言う基盤としての労働組合の意味というのは、どういうふうに感じられますか。