前川さん ちょっとアナロジーで考えたのは、私立大学の例ですね。大学には「学問の自由」ということがあるわけですけど、大学の経営側が特定の教育研究に介入して、それをやめさせるとか、特定の発言をしている人たちを冷遇するとか、そういうことをすることがあるわけですよね。
だから「報道の自由」とか「学問の自由」とか、まさに基本的人権として保障されるべきものが、民間の企業体・経営体の中で実現できない時に、どうやってそれを救うんだという問題。それは、やっぱり、民主主義社会の中で何らかの解決策を考えないと。
国家そのものではないんだけれども ―― 「中間組織」あるいは「中間団体」という言い方はあるかもしれませんが ―― それぞれの組織での権力関係の中で、本来あるべき自由、報道の自由、学問の自由というものが奪われる事態に対して、それをどう救ったらいいのかという問題があると思うんですよね。
労働組合にしても、学校の教職員組合にしてもそうなんですけど、単なる自分たちの「労働者としての権利」を主張するだけじゃなくて、それぞれ「職能団体」として自分たちの専門性に基づく活動、自由というものを確保するための力を持つべきだろうと思うんですよね。
私は長い間、日教組と対決する仕事をしていたわけです。最近は日教組を応援しているんですよ。日教組以外にも、いろんな組合がありますけども。日本全国、どこもかしこも組合が弱くなっちゃって、特にモノを言う組合が弱くなっちゃって、政権にすり寄っていくような組合が多くなって、それは非常に危ないなと思っているんですよね。
だから「職能団体」として自分たちの立場を守る。自分たちの仕事を守る。自分たちの、本来は自由であるべき活動を守る。そういう役割というのは、組合が持っている重要な役割だろうなと思いますし、それは単なる自分たちの勤務条件を良くしようというだけの労働組合ではなくて、本来、国民が保障されるべき自由をどうやって確保するかという意味での役割は大きいだろうなと、いまお話をうかがっていて思いました。